きらきらEvery(仮)

書き留めたいことを書く

少年ハリウッド感想2022 第21話「神は自らの言葉で語るのか」

 前回と対になるようなエピソード。誰よりも望んでいなかったセンターの座を得てしまったカケル。自分の意思とは関係なく、周囲は彼のことを「新センター」というフィルターを通し、各々の想像を押し付ける。自分の意図しない「自分」が作られていく心地悪さ。雑誌に掲載された単独インタビューに記された言葉も、自分のものではなかった。けれど、その「自分のものではない」言葉を読んで喜ぶ人もいる。

 ギャップに息苦しさを感じるカケルにシャチョウがかけた言葉は、この作品の(もしくはこの夜に存在するすべてのアイドルという存在の)根底にある重要なアイドル観だ。

 「アイドルってね、有るものも無いものも、すべてを求められてしまう存在なんですよ。恋人になって欲しい、家族になって欲しい、慰めて欲しい、元気にして欲しい、カッコ良くあって欲しい、可愛くあって欲しい、素を見せて欲しい、見せないで欲しい、側にいて欲しい、遠い存在であって欲しい」

 ファンはいつだってエゴイスティックだ。16話で「本物の握手」を教えてくれたファンもいれば、もっと近づいて、毎日触れていたいと思うファンだっている。そんな矛盾だらけの感情を向けられるアイドルを、祭壇に捧げられた生贄のようなもの、と表現してしまう少年ハリウッドという作品の奥深さ。

 カケルのものではない言葉で紡がれた記事を、楽しそうに読んでいた他のメンバーたち。だけど本当はカケルがセンターという立場に戸惑っていることを、みんな気づいていたのだろう。カケルには内緒で、MCにアドリブを入れて、文字通り、「ハードルを超える」ことを促す。少年ハリウッドでは度々、文字通りの行動をとることで、精神的な壁を乗り越えるエピソードが見られる。

 一見飛び越えられそうには見えなかった高さのハードル。駆け出したカケルの踏切に合わせ、メンバーは腰を落として、カケルにハードルを飛び越えさせた。その後のハイタッチは、前話でマッキーとカケルが交わしたものと重なって、小気味良い音を響かせた。