きらきらEvery(仮)

書き留めたいことを書く

少年ハリウッド感想2022 第20話「僕達の延命」

 「友達でもなかった見ず知らずの奴らと、ある日突然、歌って踊るようになった時、毎日覚えていた違和感は、もう、どこへ行ってしまったんだろう。『普通じゃない』この状況が、僕には『普通』になった」

 そんなモノローグから始まる20話。ファンの前でアイドルとしての姿を堂々と見せ、歓声を受ける。このカケルの言葉も、彼がアイドルであることをその身に自然に宿すようになったという印象を受ける。けれど、舞台袖からその姿を覗くシャチョウの表情には翳りが見えた。

 そのシャチョウが少年ハリウッドに伝えたのは、センターの交代。普段から主張の激しいキラはもちろん、目立ちたがりのシュンや、人と争うことを嫌うトミーも、雰囲気の中で前向きになっていく。そんな中、一人いつもにまして寡黙なカケルに、現センターのマッキーは「気にするな」と声をかけた。

 センターに選ばれたのはカケルだった。

 少年ハリウッドのキャラクターデザインは、細微な表情を描くためにも必要なものだ。その本領がまさに発揮されるのがこの回だろう。

 センターがカケルに決まり、「頑張れよ」と声をかけるものの、シャチョウにその心中をさらけ出され、自分でも直視していなかった感情と向きあうマッキー。そして、息の詰まるような空気の中、目を伏せる者視線を逸らす者、見つめる者。

 「彼らは今、一生に一度しか歌えない歌を歌っています。本当は毎日がそうなのに、人はすぐそれを忘れてしまう」

 冒頭のカケルのモノローグに答えるように、シャチョウは舞台袖でそう言った。先代シャチョウの突然の逝去で、その短い活動期間を終えた初代・少年ハリウッド。そんな過去を持つシャチョウだからこそ、誰よりも強く「今」の価値を知っているのだろう。そして、カケルにとって「普通」になった日々を「特別」に感じ続けることの難しさも。

 アイドルに「永遠」を願う想いと、「一瞬の特別」を願う想いは、相反しているようで、実は同じ性質なのではないだろうか。

 失うことが確定したセンターの位置から客席を臨むマッキー。その瞳に映る風景は、なによりもかけがえ無く、「特別」なものだったはずだ。